「セブン―イレブン・ジャパンが40歳を迎えた。今では生活に溶け込む存在の同社だが約10年周期で逆風に遭ってきた歴史がある。その逆風を突いた先にあったのが消費者ニーズの顕在化と業界の近代化。そして小さなお店の集積は『日本最大の小売業』の地位を着実に固めてきた。
『真夜中に客は来ない』『定価販売では売れない』などの“常識”は利便性を求める消費者に覆された。深夜族など生活様式の変化もあった。
それから約10年。メーカーに競合会社の商品を混載する共同配送と、商品へのバーコード添付を求めた。系列物流網の否定となる提案は反発を食らう。メーカーが渋々採用すると車両数は劇的に減り、物流費を削減できた。呉越同舟型の配送は今や常識だ。
商品の顔であるパッケージにしましま模様のバーコードを付けることにも反発があった。従ったメーカーは売れ行きが把握でき効率的な生産体制が築けた。消費者ニーズに沿う商品開発へ有効な武器にもなった。
10年ほど前、ATM主体のセブン銀行の事業化が困難といわれた。営業時間の限られた既存銀行に不満を持つ利用者が24時間稼働のATMを利用し、タクシー運転手や飲食店主の夜間金庫代わりとなった。創業3年で黒字化を達成した」。
「非常識」経営が成功につながった
業界の常識にあえて異議を唱えて、お客様目線で利便性を追求したことがセブンの成功を支えてきた。業界や社内の非常識はお客さまにとっては常識だったわけだ。「非常識」こそセブンのイノベーションの源泉であったというわけだ。
もう一つの成長の秘密
セブンの成功のもう一つの要因はメーカーとの長期的な戦略提携にある。セブンの成長を支えてきた商品群にお弁当、おにぎり、惣菜、おでん、焼き立てパンなどがある。こうした戦略商品カテゴリーの製造メーカーはセブン向けの商品しか製造していない。ある意味でこれらのメーカーはセブンの専用工場として機能している。
セブンはまったく自社工場と同じ機能を自らの経営資源を投下することなく、しかも自社工場を持つリスクから自由になった形で保有している。セブンはこれらのメーカーと共同して製品の企画開発を実現している。
専用メーカーだから製造ノウハウ、製造設備、レシピに関わる企業秘密は完全にガードできる。製造コストもセブンにとってはガラス張りになる。今後はこの方式を川上の主原料にまで拡張することが考えられる。つまり農業分野で生産者と直結して、例えば米や野菜の調達システムを備えることになるだろう。
ここまで徹底した専用工場システムはセブン以外のコンビニは持っていない。これも業界の「非常識」につながるシステムだ。
次はどんな「非常識」に挑戦するのだろうか
セブンの次なるイノベーションはリアル店舗とネット店舗との融合に違いない。ネットで注文して店舗で受け取る形はすでに「ピアチケット」で実施済みだ。セブン&アイグループで扱うすべての商品をセブンで受け取り可能にするくらいはすでに計画済みだ。
セブンなら店舗で下見をしてネットで購入する「ショウルーミング」についても思いがけない仕掛けで挑戦してくるかもしれない。例えば家電商品がその対象になるかもしれない。時計や装飾品などの高額商品もありかもしれない。セブンのPBならば開発費を負担しても請け負う家電メーカーはきっとでてくるはずだ。
何が飛び出すか。セブンからは目が離せない。
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