「今年4月の消費増税が近づくなか、消費者の買いだめや駆け込みが想定ほど起こらない可能性が浮上している。民間各社のアンケート調査では、消費者の6割程度が増税前には『買いだめなどはしない』と答えた。一方、増税後も買い控えや節約志向は根強く、消費の盛り上がりに欠けた状態が続く公算が出てきた。
日本生命保険が昨年末に一般消費者8千人超を対象に実施した調査では、『増税を見越した買い物の予定はない』との回答が62%にのぼった。
野村総合研究所が同時期に行った調査でも、消費増税前には『何も買っていない・予定もない』との答えが64%と最も多かった。駆け込み派は『食料品・日用品』の16%が最多で『冷蔵庫など耐久消費財』は9%、『車』は8%にとどまった。家電など『エコポイント制度の時に買った人が多く、1997年の消費増税の時ほどは駆け込みが起こらない可能性がある』(野村総研の松下東子主任コンサルタント)という」。
庶民は生活防衛体勢に入った
円安による食品や日用品の価格引き上げが始まっている。政府や経団連の掛け声はかかれど、庶民は収入の増加に全く期待していない。従って消費税増税による購買力の低下に備えて生活防衛の体勢を敷いて冬の時代の乗り切りに備えている。その実態がこの調査結果によく出ている。
企業も自己防衛体勢に入った
消費需要の下振れ懸念を身近に感じている企業は製品の実勢価格の据え置きを追求して更なるコストダウンを至上命題にしている。従って人件費を改善するゆとりは残念ながら生まれるはずもない。そればかりかコスト削減は企業の原材料費や経費の支出額を縮退させて総需要の増加要因を相殺させることになる。
消費時増税は経済成長を阻害する
こうして消費税増税はアベノミクスの目的である経済を成長経路に乗せるシナリオに大きな負の衝撃を与えることになる。これを回避しようとして政府・日銀は更なる金融緩和と財政支出の拡大路線を拡充する。そしてそれがまた円安を促し更なる需要減への悪循環に落ちこむことになる。
悪循環からの脱出はどのようにして可能か
このような状況からの脱却を真っ先に試みるのは食品や日用品などの内需依存産業に属する企業だ。脱却の方向は二つある。一つはイノベーションによる新規市場の創造だ。もう一つは海外市場の開拓だ。
イノベーションの方向性
内需型企業は国内市場での価格競争から何とかして抜け出して、ブルーオーシャン市場を創造しようとする意欲が旺盛だ。このとき生活者の声にならない声としてのニーズを聴く方法を手にしているか否かが成否を分ける決め手となる。
ネット社会においては声にならない声はネット上に溢れかえっていると想定することが必要だ。ネット上に溢れるイノベーションの種をどれだけ有効に拾い出すことができるか否かが問われているということだ。
ネット上に溢れるイノベーションの種を救い上げ、磨けば光る原石を選別する目利き力を備えれば、多くのイノベーションの可能性を獲得することができる。
内需型企業の海外市場開拓
内需型企業はこれまで海外市場に頼らずに巨大な国内市場に依拠してそこそこの業績を上げてくることができた。しかしこれら企業は円安による国内市場の購買力の減退に直面して海外市場での需要に依拠して生き延びる選択を否応なく採らざるを得なくなる。
内需型企業が海外進出の成否を分けるのは進出先で多くの消費者に受け入れられる品質・価格の仕様決定力だ。よくある失敗は日本仕様の品質・価格をそのまま提供してしまうことだ。現地仕様に変えることで製品のアイデンティティを損なうという先入観がこの失敗の前提にある。
大事なのは現地の購買力に合わせた価格設定とその価格に見合う品質仕様の開発だ。この努力を的確に行えば海外市場は大きな成長軌道を用意してくれるはずだ。
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