「家具小売り世界最大手イケアの日本法人、イケア・ジャパンは9月をメドにパートの待遇を見直し、フルタイムで働く正社員と同等にする。契約期間を原則廃止したり、時間当たりの賃金水準をそろえたりして、正社員との垣根をなくす。やる気を引き出して顧客へのサービスを高める狙い。人手のかかる小売業で、パートなどの待遇を改善する動きが鮮明になっている。
イケア・ジャパンでは1月末時点で約3300人が働いており、このうちパートは約2100人を占める。同じ職務に就いていれば、時給換算で正社員と同等の賃金幅とする。同時に、就業時間の長さにかかわらず福利厚生を統一する。その一方で、生活のスタイルに合わせて短い時間でも働ける権利は残す」。(2014.4.18付日経新聞朝刊)
イケアの試みは画期的だ。それも二つの意味で画期的だ。
一つ目は同一労働同一労働条件の原則を実現したからだ。しかも期間契約社員という位置づけをなくしたことで、すべての社員が実質的に正社員になった。
二つ目は働く側の労働時間の選択を認めつつ正社員並みの労働条件を実現したことだ。働く側から働く時間を選択できるという意味で、パートタイム労働が働く側にとって積極的な価値があることを認めたことだ。
この意味においてイケアの試みはパート・アルバイトを正社員にする他社の施策に比べて、より大きな価値を持つといえる。
いずれにしてもこのところパート・アルバイトの待遇改善の動きは、下表にしめしたとおり、特に小売業において大きな流れになりつつある。生産労働人口の縮減が始まったことがこの流れに掉さすことにつながっている。
さらには国内消費の成熟化が小売業の競争を価格競争だけでなく、接客の質の競争へと、競争の次元の高度化を迫っていることもこの流れの大きな要因になっている。
「イケアは2020年までに日本で店舗数を14店、売上高を1500億円程度とそれぞれ現在の2倍にする計画を掲げている。4月1日に日本法人トップに就任したピーター・リスト社長は15日、『計画達成には従業員一人ひとりの挑戦意欲が重要。従業員の満足度を高めることが顧客へのサービス向上にもつながる』と、パートの待遇向上の狙いを説明した。待遇改善による負担について『コストではなく投資』との考えを示した」。
今後もパート・アルバイトの待遇改善の動きは大きな流れになるだろうが、イケアの試みがベストプラクティスとして主流を形成することを期待したい。
ファーストリテイリング |
販売担当のパート・アルバイト1,6000人を正社員に |
スターバックスコーヒージャパン |
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西友 |
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三越伊勢丹ホールディングス |
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イケア・ジャパン |
パート2100人の待遇を正社員並みに |
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