人手不足が深刻になりつつある。この深刻な人手不足のなか労働強化が引き金になってブランド価値を毀損したり、閉店で事業の縮退をせざるを得なくなる事態が続いている。
その象徴的な出来事がすき家の「鍋の乱」だ。
すき家の2000店舗のうち5月14日時点で閉店している店舗が184店もある。その原因は深刻な人手不足の採用難に加えて、2月から提供を始めた「牛すき鍋定食」が従業員の負担を増加させて、退職するアルバイトが急増していることだ。
アルバイトの退職の理由は時給の水準が低いことではなくて、付加価値の高いメニューが追加になって、手間のかかる仕事が増加し、しかも従来より労働時間が延び、業務の負担が重くなったことにある。
またワタミでも傘下の居酒屋である和民が「ブラック企業」の烙印を押されて、その対応のために和民の1割にあたる60店舗の閉店を決めた。
人手不足の対応にサービス業各社は一斉に非正規社員の正社員化などの対策に動き始めた。
ファーストリテイリング |
販売担当のパート・アルバイト1,6000人を正社員に |
スターバックスコーヒージャパン |
4月に契約社員800名を正社員に |
西友 |
正社員化の対象を物流センターのパートに拡大 |
三越伊勢丹ホールディングス |
契約社員の正社員登用を拡大 |
イケア・ジャパン |
パート2100人の待遇を正社員並みに |
ミサワ |
接客契約社員200名を正社員に |
セブン・イレブン・ジャパン |
アルバイトの応募者向けコールセンターを本部が設置し加盟店の求人を支援 |
ウエルシアホールディングス |
新卒薬剤師の初年度年間給与を昨春入社から従来比25%増 |
スカイラーク |
パート・アルバイトを店長に登用する研修制度を導入 |
ハイディ日高 |
パート・アルバイトに最大10万円超の賞与を年2回支給 |
しかし「鍋の乱」を見る限り時給を引き上げたり正社員化を進めても、労働強化を伴うかぎり従業員は離職の道を選ぶことがはっきりしている。
必要なのは生産性を上げて、付加価値の高いサービスや商品を楽々と提供できるように業務プロセスを革新することだ。同時に従業員の学習と成長を支援してより高度な業務プロセスに楽々と従事できるようにすることだ。
つまり製品とサービスのインベーションとこれを実現する業務プロセスのイノベーションそして革新されたプロセスを難なくこなす社員価値のイノベーションの三位一体のイノベーションを同時に実現することが求められているわけだ。
こうしたイノベーションを通じて日本のサービス業の生産性は圧倒的な高みへとシフトするはずだ。そのイノベーションを実現するうえで、トヨタ生産方式に代表される日本の製造業での生産性向上の方法論が大きな役割を果たすに違いない。
つまり「良い設計の良い流れ」がサービス業の生産性革新においても本格的に追求される時代が到来したということだ。
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