領収書の電子保存がようやく容認される
「政府は税務調査の証拠となる領収書や契約書の原本を原則7年間保管するよう企業に義務付けた規制を2015年にも緩める方針だ。3万円以上の場合に紙のまま保管するよう求めていたが、スキャナーで読み取って画像データを保存すれば原本を捨てられるようにする。米国や韓国は税務関連の書類の電子保存を広く認めており『岩盤規制』の撤廃にようやく踏み出す」。(日経新聞2014.11.5朝刊)
こんな規制がいまだに残っていたこと自体が驚くべきことだ。領収書の原本保存の規制のおかげで、法人は膨大な領収書を保存するために、原本の整理整頓のための費用、保管費用、廃棄費用、保管や廃棄のための物流費などきわめて多額の経費を使っている。
しかも保存された原本は税務調査の対象にならなければ一度も日の目を見ることなく7年後に廃棄される。まったくムダな、法人イジメのような規制だ。
「経団連の試算では国内企業が領収書や契約書などの税務書類を保管するコストは合計で年間約3千億円にのぼる。これらの保管コストをペーパーレス化でゼロにできれば、企業にとっては法人税の実効税率を約0.6%下げるのと同等のコスト削減効果を見込める。
海外に比べ日本は書類の電子化が遅れている。世界銀行が調べる「ビジネス環境ランキング」の15年版で手続きの煩雑さを含む「納税」の項目は189カ国中122位で、14年版から8つランクを落としている」。(同)
また保存した原本を必要があって取り出すためには、よほどの効率的な整理方法を徹底していないと、これまた膨大な作業工数を必要とすることになる。日本の法人の間接部門の生産性の低さの一因はこうしたばかげた規制による。
「書類の電子保存を広く認める諸外国と日本には脱税に関する制度の違いもある。電子保存を認める国は企業側に脱税でないことを立証する責任を課す場合が多いが、日本では逆に税務当局側に企業の脱税を立証する重い責任を課している。
財務省はこうした制度の違いを理由に紙の原本の保管にこだわってきた。今回、規制を緩和する一方、不正が横行しないように内部統制の方法などを細かく定める」。(同
ある意味で余計なお世話だと言えなくもない。不正をした法人に対して二度と不正をしないと思わせるくらいのペナルティを課せば、どんな内部統制をしようと個々の法人の工夫次第に任せればすむことだからだ。
むしろ財務省のやるべきことは領収書そのもののデジタルデータ化を志向することだ。売り手と買い手の取引データを決済時にデータと取引主体のIDを付加してデジタルデータとして保存し、税務計算の基礎データとして利用を認める仕組みを作るということだ。
ここまでやれば領収書すら不要になる。同時に法人の税務計算も効率化し、税務当局の税務調査も徹底的な業務削減が実現することになる。