日本人の長時間労働が減らない。
「正社員に絞った総労働時間は2014年に2021時間で、ここ10年以上はほぼ横ばいだ。週休2日制の普及でルール上の労働時間は減っているが、残業時間が増えており、働く負荷は減っていない」。(日経新聞2015.3.23朝刊)
パート社員を含めた総労働時間は一人当たり1800時間を下回り、OECD諸国の平均や米国の約1800時間を下回っているが、パート社員を除いた正社員の平均では2021時間に達する。
残業時間はなぜ減らないか?
日経新聞はその要因を次のように説明している。
「長時間労働の第1の理由は、終身雇用にある。米国では受注が増えれば社員を増やし、受注が減れば社員を減らすのが普通だが、日本では『今いる社員の労働時間を増やしたり減らしたりして対応するのが一般的』(浜口桂一郎・労働政策研究・研修機構主席統括研究員)になっている」。(同)
長時間労働の第二の理由は、働く時間が長い人が評価される企業風土にある。
「山本勲・慶大教授の調査によると、長く働く人ほど、出世する傾向があった。課長の手前の大卒社員を継続調査したところ、週の労働時間が10時間延びるごとに、翌年に課長に昇進する確率が3%上がるという結果が出た」。(同)
長時間労働の第三の理由は、「『社員ごとの業務の範囲があいまいなため、生産性が高い人に仕事が集まりやすい』(山本教授)」(同)という、職務定義の曖昧さにある。
しかし以上の要因に加えて、仕事に関わる意思決定の権限やプロセスが曖昧だということが長時間労働の決定的要因として考えておかなければならない。
日本企業の組織において特徴的なことは、マネジメントの階層が多く、結果として意思決定までのプロセスが長いことが挙げられる。
意思決定に関わる階層が多いことに加えて、意思決定にあたって組織全体のコンセンサスが重視される結果、コンセンサスを得るための資料つくりや、会議がやたら多いことが特徴的だ。
このような意思決定における欠陥が、ムダな仕事を産み出し、生産性を押し下げ、労働時間を長くしている。
現場で決められることがあまりにも少ないことが仕事を増やし、結果的に長時間労働を招いているということだ。
管理階層を減らし、現場の意思決定権限を大幅に増やすことこそが生産性の向上、そして労働時間の大幅な短縮を実現する最短経路に他ならない。
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