「そこまでやるか――。米マイクロソフト(MS)が先週、中国で発表したある“実験”が注目を集めている。米グーグルの基本ソフト(OS)『アンドロイド』を搭載したスマートフォン(スマホ)に次期OS『ウィンドウズ10』を移植するというもので、中国スマホ大手の小米(シャオミ)が協力する。
中国・深圳で開いた端末メーカーの技術者向け会議『WinHEC』で、テリー・マイヤーソン上級副社長が明らかにした。MSが小米の主力製品『Mi4』にウィンドウズ10の試用版をインストールするためのソフトを開発。一部のユーザーに無償提供し、使い勝手などの意見を求める。
今回の実験でMSが配るソフトは小米のスマホに標準搭載されている『アンドロイド』を上書きするため、インストール後はウィンドウズしか使えなくなる。いわばハードの『乗っ取り』だ」。(日経新聞2015.3.24朝刊)
昨年2月にナデラ氏がマイクロソフトのCEOに就任して以来、MSの新戦略が矢継ぎ早に打ち出され、モバイル&クラウド時代に生き残るための大転換が鮮明になってきている。
MSの主力製品であり、最大の収益源のWindowsを無償化して、Windows10として提供することが新戦略の根幹となっているが、Windowsの無償化は従来のMSのビジネス・モデルを破壊する、まさに「そんなバカな」と思いたくなる打ち手だ。
無償化の延長線上にAndroidにWindows10を移植する打ち手が打ち出され、「そんなバカな」と思わせる打ち手が畳み込むように連続して繰り出された。
スマホのOSの80%を超えるシェアを占めるAndroidが無償で提供されている以上、モバイルの世界でWindowsを浸透させるためには無償が大前提になる。従ってモバイルの世界でWindowsが世界中で10億台を超えるモバイルに搭載されているAndroidを超えるには無償化は避けて通れない道だったわけだ。
WindowsはPCの世界では圧倒的なシェアを持っている。Windowsの上で作動するMSOfficeも法人のユーザーを中心に今のところ揺るぎない世界を誇っている。モバイルの世界の台頭とともに揺らぎ始めているこのMSの牙城を防衛し、同時にモバイル世界でMSワールドが席巻する状況を実現することがMSの現在の大命題である
まさにWindowsの無償化とモバイル世界のOSのWindows化はそのための大戦略と言うわけだ。
特に法人ユーザーにとってはPCとモバイルが同じWindowsのOSで作動し、MSOfficeもモバイルで違和感なく作動する状況は願ってもない世界と言える。
またクラウド世界の普及は、今後PCなりモバイルそのものを、シン・クライアント化していくことは必然であるので、この世界が普及することを前提とすると、PCもモバイルも同一のOSで作動している状況が、ユーザーにとっては不可欠なものになるはずだ。
こうした意味でもWindows10のAndroidへの移植は、モバイルOSをAndroidからドミノ倒し的にWindowsへと転換していくけん引力になることは間違いない。
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