セブン・アイ・ホールディングスの傘下にあるイトーヨーカドーの社長が突如交替した。
14年に社長就任したばかりの戸井氏が退任し、7年社長を務め、14年に戸井氏に引き継いだ亀井氏が社長に復帰した。
9日付け日経新聞朝刊によれば事の経緯は下記のとおりだ。
「『業績低迷の責任をとり辞任させていただきたい』。1月7日の午後、戸井氏はセブン&アイ本社9階にある鈴木敏文会長の執務室を訪れ、辞表を差し出した。突然の申し出に鈴木会長も慰留したが、戸井氏の辞意は固かったという。
ヨーカ堂は15年3~11月期に144億円の営業赤字となり(前年同期は25億円の赤字)、業績悪化に歯止めがかかっていない。日米のコンビニエンスストア事業が好調でグループとしては営業最高益となるなか、足を引っ張るヨーカドーへの風当たりは強まっていた。
『懸命にやってるのだろうが、成果に結びつかなければ惰性の仕事だ。ヨーカ堂は何も変わっていない』。戸井氏が辞表を出した前日の6日、ヨーカ堂の店長会議で鈴木会長は激しい言葉を飛ばした。戸井氏ら幹部は黙り込むしかなかった。
今回、取締役からも外れ、社長付となる戸井氏は営業畑の『エース』と呼ばれ、14年に社長に就任した。現場からの信頼も厚く、7年半続いた亀井政権から、周囲も納得する自然な交代だった。
売上高は毎年落ち込み、営業の強化は待ったなし。戸井氏は経営者として非情な決断を迫られた。15年9月には全店舗の2割にあたる40店を閉鎖する方針を決めた。これはヨーカ堂として過去最大規模の店舗閉鎖だ。並行して画一的な売り場づくりから脱却するため、店舗ごとに仕入れなどを任せる独立運営方式を導入するといった改革も急いだ」。
通常社長に就任して手腕のほどを本当に評価できるのは3年程度の時間が必要だ。まして戸井氏は昨年9月に経営業績の立て直しのための抜本策となる改革案を練り上げたばかりだ。
多分この回復策は第一歩でありこれに続いて次々に改革策が打ち出される手はずが調っていたに違いない。
しかもこうした改善策は当然のことながら鈴木会長に了解を受けていたはずだし、実行に移る前に、その成果を危ぶむということは最高経営責任者としてはあってはならないことだ。
全店長を前にして戸井氏の手腕に疑問を呈する発言は、鈴木氏としては役員社員に対する激を飛ばすくらいのつもりであったろうが、背水の陣を敷いていた戸井氏にとっては、役員社員を掌握するパワーを失うことにつながると判断したに違いない。
鈴木会長の後ろ盾を失って、孤立無援のままどうやって改革の指揮が取れるだろうかと考えた時に、深い喪失感にとらわれたはずだ。
厳しい状況にある部下を孤立無援の状況に置いた鈴木氏は、まさか戸井氏にかみつかれるとは思いもしなかった。いつもの調子で激を飛ばしたつもりでいたのだろう。
そもそも鈴木氏はイトーヨーカドーの経営基本方針を設定するCEOだ。そして石井氏はCEOの基本方針を実行するCOOの役割を担っていたはずだ。
したがってイトーヨーカドーの立て直しは会長と社長が一心同体で取り組むべき課題で、その一体感を役員社員に信じさせることができて初めて成り立つものであった。またその出来栄えが順調でないとしたら、CEOの経営基本方針(経営戦略)に瑕疵があることに思い至るべきなのだ。
仮に戸井氏の手腕が劣ると考えるのならばなおさら鈴木氏は戸井氏を支えなければならなかったということになる。
イトーヨーカドーの再建が進まない最大の要因は、セブン・イレブンを大成功に導いた鈴木氏にしても、セブン・イレブンの成功体験があまりに巨大であったがゆえにイトーヨーカドーの再建についてはついに的確な再建策を見いだしえなかったことにあるのではないだろうか。
とすれば亀井氏が復帰しても業績の衰退は加速するだろうし、いずれは外国人アクティビストが指摘するように売却することを余儀なくされるにちがいない。
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