「DIAMOND ONLINE」で野口悠紀雄氏が興味深い論説を展開している。
http://diamond.jp/articles/-/84936
野口氏の論旨とそれをベースにさらに議論を展開すれば以下の通りとなる。
1.原油価格が14年央に100ドルから30ドルを割る水準にまで急速な低下をしている。この傾向は今後も長期的に継続すると予測される。
2.原油価格に象徴される資源価格の大幅な低下は資源の輸入価格の低下をもたらし、その効果は15年に13.2兆円の輸入価額の削減を実現した。
3.資源輸入価格の下落にもかかわらず消費者物価にそれが反省されない状況が15年には顕著になった。資源を原材料あるいはエネルギー源として利用する企業がコスト削減を価格引き下げに反映せずそのまま利益に計上したことが大きな要因だ。結果として15年に企業収益はこのコストダウンが大きく寄与して顕著に増大した。
そして企業のこの行動を後押ししているのが日銀および政府の物価上昇目標だ。
4.直近の円高は資源輸入価格の更なる押下げにつながる。これを企業が製品価格の引き下げに反映する行動に移れば、消費者物価の低下は顕著な形で現れるはずだ。
5.円高は輸入資源価格だけでなく輸入食品の価格の低下にもつながる。食料品自給率39%の現状は円高が食料品の輸入価格の低下につながり、それが食料品全般の価格低下をもたらすことは明らかだ。しかしここでもそのコストダウンを企業が製品価格に反映しないとすれば、消費者は恩恵を受けられない。
6.日銀および政府は消費者物価2%上昇目標を即刻廃棄し、輸入物価の下落を消費者物価の下落につなげるための旗振りを始めるべきだ。消費者物価が下がることで勤労世帯の可処分所得拡大をもたらし、消費支出は増加し、有効需要拡大が実現し、GDPの拡大が現実のものとなる。
7.企業は価格の引き下げを実行しても原材料価格のコストダウンと、価格効果による需要の拡大の好循環によって業績が向上し、実体経済の好調に基づく株価の上昇が期待できる。つまり円高でも企業業績は拡大し、株価は上昇するのだ。
8.またこの好循環は企業の設備投資、個人の住宅投資の資金需要を産み出し、結果として金利の上昇と、それによってここでも有効需要の拡大が実現する。
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