米国のバイデン大統領による大型経済対策が矢継ぎ早に進められている。
29年の大恐慌にルーズベルト大統領が実施した「ニューディール政策」の現代版だ。
コロナ対策
まずは3月11日に新型コロナ対策の経済対策法に署名した。
これによって次の政策が実行に移される。
・ 高額所得者を除くほとんどの国民に1人あたりり最大1400ドル(約15万円)が支払われる。
・ 週300ドルの失業保険の追加給付期間が9月6日まで延長される。
・ 数百万人を貧困から救うことが期待される、子どものいる世帯への税額控除。
・ 州政府や自治体には3500億ドル、学校には1300億ドルが支給される。
・ 新型コロナウイルス検査の拡大や研究に490億ドル。
・ ワクチン供給に140億ドルを支出する。
これに続いて大統領は28日夜に、
今後10年に及ぶ「米国家族計画」ならびに「米国雇用計画」について方針を示した。
米国家族計画
米国家族計画は、子育てや教育の支援、
人種や所得の違いなどで生じる不公平の削減を目指し、今後10年で1兆ドルの財政支出を計画している。
その中核政策は以下の通りだ。
・中低所得層の保育負担の軽減に2250億ドル。
・ 介護など包括的な有給休暇制度の確立に2250億ドル。
・ 幼児教育の機会拡充に2000億ドル。
米国雇用計画
米国雇用計画は以下の政策を中心に、15年間で2兆ドルを見込んでいる。
・ 米国雇用計画は道路、橋、EV用の充電設備などのインフラ投資に6,210億ドル。
・ 学び直しの機会を増やすため、日本の短大にあたるコミュニティーカレッジの無償化に1090億ドル。
財源は?
これだけの大規模政策の財源はどのように設計されているのだろうか。
富裕層向けの増税と、法人税の増税で賄う設計だ。
富裕層向けの増税策は以下の通りで、10年間で1.5兆ドルの増税を見込む。
・ 連邦個人所得税の最高税率を37%から39.6%へ増税。
・ キャピタルゲインの税率を現行の20%から39.6%へ増税。
法人税の増税策は以下の通りで、15年間で2.5兆ドルの増税を見込む。
・ 連邦法人税率を20%から28%へ増税。
・ 多国籍企業の海外収益に21%課税(現在の2倍)。
・ 大企業の会計上の利益に最低15%を課税するミニマム税の導入。
・ 歳入庁による税務調査の厳格化で脱税を摘発し、10年間で7,000億ドルの増税を見込む。
法人税率の世界標準化
増税によって、租税回避がとりわけ法人のそれが懸念される。
これに対して法人税率を世界各国で共通の税率にすることが求められる。
すでに米国は先進国に対してその呼びかけを開始している。
コロナによる経済に対する打撃はあらゆる国の経済を困難に陥れている。
とすれば大規模な経済対策は世界共通に必要なはずだ。
コロナ禍を奇貨として法人税率の共通化が進むことを期待したい。