経産省は2030年時点での電源別のコスト試算を公開した。
これによると太陽光発電のコストが原子力発電のコストを下回り最低コストになる。
今回の試算は電気を安定して届けるためのコストを含んでいない。
天候による電力供給の不安定を別電源で吸収したり、夜間の供給のために蓄電するなどの調整コストは含まれていない。
経産省はこうした調整コストを含めた発電コストを「限界コスト」と定義。
参考値として示した。
「それによると、事業用太陽光は30年時点で18.9円、陸上風力は18.5円だった。
一方、原子力は14.4円、
LNG火力は11.2円、
石炭火力は13.9円で、
いずれも太陽光と風力を下回った」。
50年までにカーボンニュートラルを実現する目標を政府は掲げている。
今回の試算はこの目標達成のための電源構成を作成するための前提データになる。
この試算には二つの問題が含まれている。
1. 再生エネルギーによる発電コストの世界標準に比して日本のコストは異常に高い。
「エネルギー白書2021」によると2019年における再生エネルギーによる発電コストは、以下の通りだ。
洋上風力 0,12¢
太陽光 0.07¢
陸上風力 0.05¢
水力 0.05¢
2. 原子力発電の「限界コスト」には、使用済み核燃料の廃棄コスト、原発事故による被害補償のための損害保険料などは含まれていない。
経産省は「限界コスト」などという曖昧な概念を持ち出して、
30年においても原発のコストが太陽光を下回ると主張している。
その背景には原発に依存する電源計画を策定する意図がありありと透けて見える。
しかし原発は一刻も早く停止し、全てを廃炉に持ち込むことが最善策だ。
福島の事故ではいくつもの奇跡的な偶然が重なって、
東日本の壊滅的な被害を回避できた。
原発事故は発生すれば取り返しのつかない被害を及ぼし、
また激甚な災害をもたらすリスクを予めヘッジすることも不可能なのだ。
原発を即時停止し、原発に依存しない電源計画を持つことは、再生エネルギーの急速な普及とコストダウンの劇的な進展を促す。
福島事故を受けてドイツのとった原発脱却政策がこのことを雄弁に物語る。
先に見たように日本の再生エネルギーの普及の著しい遅れとコストの高止まりは、いまだに原発を主力電源として温存する政策が最大の障壁になっているのだ。
原発に見切りをつけることが日本にとっても、再生エネルギーの普及と大幅なコストダウンのための突破口になることは間違いない。
東日本大震災からの日本の復興はここから本当の意味で始まる。