日経新聞11月18日によると、円の総合的な実力を示す実質実効為替レート(以下「円実質レート」)は約50年ぶりの低水準に近づきつつある。
円実質レートは85年のプラザ合意以降80の水準から上昇を続け95年に頂点に達し150を記録した。
95年の日米合同の円売り協調介入以後は円安政策が継続的に行われて、継続的に低下傾向が続いた。
更にアベノミクスによって円安志向が強化され、日銀の異次元金融緩和策が実効レートの低下を加速させた。しかし
円高とグローバル化の進展は、円安が輸出企業にとって、すなわち日本経済にとってプラスの効果をもたらすという事実は消滅傾向に転換した。
この事実を軽視ないし無視して継続した円安政策は日本経済の25年に及ぶ衰退傾向をもたらしたのだ。
「かつては円安が製造業の輸出競争力を後押しし、経済成長に寄与した。多くの企業が海外に拠点を移すなどして経済構造が変わり、円安による日本経済の押し上げ効果は弱まった。国内総生産(GDP)に占める製造業の比率は1970年代の35%から、2010年代には20%に低下した」。
更に円安が企業の交易条件を改善する効果は今になって無くなるどころか、輸入原材料およびエルギー価格の上昇をもたらして、むしろ交易条件を悪化させる要因になっている。
企業の交易条件の悪化は企業収益の減少に繋がり、給与収入の抑制を結果する。
また円の購買力の減衰はほとんど海外からの輸入に依存する食料やエネルギーなどの消費財の価格上昇につながる。
輸入消費財の価格上昇は勤労者の所得の減少との相乗効果によって消費の低迷をもたらすことになる。
つまり円安が続く限り日本経済は更なる縮減傾向に陥いることになる。
このジレンマからの脱出の道はあるのか。
一つだけある。
25年続く経済の低迷状況からの離脱の道は個人消費の二大柱である食料とエネルギーの自給率を改善することをおいてほかはない。
またエネルギーの自給率向上は再生エネルギーへの依存によってのみ可能であり、食料自給率の向上は休耕地や耕作放棄地の活用によってのみ可能になる。
したがってこの二大カテゴリーの自給率の向上は奇しくも気候変動対策と軌を一にするという意味で起死回生の奇手になるのだ。
一般的な為替レートは日本と米国など2国間の通貨の関係を示す。実質実効為替レートは様々な国の通貨の価値を計算し、さらに各国の物価変動を考慮して調整する。
自国通貨の実質実効レートが高いほど海外製品を割安に購入でき、逆に輸出には不利となる。BISは2010年を100として実質実効為替レートを算出している。